【使命】に突き動かされてお店の未来を考える|鳥末本店 秋元 紳太郎|『週刊フードラボ』#10

今回のゲストは、鳥末本店 秋元 紳太郎(あきもと・しんたろう)さん。明治38年創業の鳥末本店は、地元熊谷のお客様はもちろんのこと、オンラインショップによって全国の食卓に彩りを添えている。そんな人気店の店頭に立つ紳太郎さんは、東京から福岡まで様々な場所でのサラリーマンとしてのキャリアを経て、父が代表を務める鳥末本店に戻ってきたのである。次世代を担う紳太郎さんは、これまでの伝統に加えて新しいものを取り入れ、その使命を果たそうと日々邁進する姿が伝わってくる。

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「家族が上司」という違和感

紳太郎さんは、8年前実家に戻ってくるまで熊谷を離れ、家業とは異なる営業の仕事に就いていた。転勤もあり、少し慣れてきた入社3年目の頃、父と祖母の体調が万全ではないことを電話口で知った紳太郎さんは、熊谷に戻ることを決意する。4代目代表取締役を務める父の元で指導を受け、家に帰れば上司である父と食事をする。そんな日常に違和感を覚えていた時期もあったと言う。

今では、「もっとこうしたら良いのではないか。」と客観的に意見を言えるようになってきたそうだ。このような変化も、紳太郎さん自身二人目の子が生まれ、指導する側である父の気持ちがわかるようになってきたからと話す。

子どもも大人も大好きな「うま辛カリーチキン」の味

働きながら自分の色を出していくことにも力を入れている紳太郎さん。「熊谷B級グルメ」や「熊谷うまいもんカップ」への出場や数々の優勝によって、その名を轟かせてきた。出場当初は、「B級グルメなんて」と抵抗があった父。それを説得してまで出場したのには理由があった。お客様の幅を広げることである。若い世代に対しては、老舗の「鳥末」という名を知ってもらいたい。以前来てくれていたお客様に再び戻ってきて欲しい。そんな思いを持っていた。

2019年に開催された「熊谷うまいもんカップ」で優勝したのは、鳥末本店の「うま辛カリーチキン」である。これまで大会に出品していたのは父が開発したものばかり。自分自身の手で生み出したもので勝負したいという思いから商品開発を行った。調味料の調合、カレーに合わせる食材の吟味など試行錯誤を繰り返し、出来上がったものだった。決定打となったのは、常連さんに試食してもらったときの「鳥末の唐揚げを残しつつほんのりカレー味がする。」という一言。まさに作りたいものが完成した瞬間だった。これが店の看板商品となったのである。

鳥末本店のこだわり

最近では、オンラインショップを利用して、配送での商品の提供にも力を入れている。一方で、「お肉屋さんで肉を買うこと」すなわち、「鳥末本店を訪れて商品を手に取ること」へのこだわりがある。それは「コミュニケーション」である。会話をしながらお客様が求めている肉をカットすることは、スーパーやネットでは味わえない体験である。また、「鮮度の良いものを買ってもらえる」ことも実店舗ならではの体験だ。店舗で新鮮な肉をお客様に合わせ成形する。お客様はその肉を自宅に持ち帰りそのまま料理をする。そして、安心安全な肉を美味しく食べることができる。これらのこだわりが、鳥末本店が信頼関係を築いてきた一つの所以である。

紳太郎さんの【使命】

これまで築いてきたお客様との信頼関係を大切にしていくこと。それに加えて、時代に乗り遅れないように革新も続けていかなければならない。これらを担うのが、紳太郎さんの【使命】であるという。100年以上続く老舗で働くことは、これまでの歴史とこれからの希望を背負っていくことなのではないだろうか。鳥末本店が大切にしている「全ては信頼してくれるお客さんのために安心安全おいしいお肉の提供」。これを胸に、熊谷市だけではなく日本中、そして世界中の人々に美味しいお肉を食べてもらえるよう活動の幅を広げているのである。

伝統を守りつつ、新しいことに挑戦していく紳太郎さんは、熊谷の地で愛され続けるお店の未来を見据えている。

※本文は、2020年1月20日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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