【無題】の未来を背負う覚悟|そば処 木村屋 木村俊太郎|『週刊フードラボ』#12

今回のゲストは、そば処 木村屋の木村俊太郎(きむら・しゅんたろう)さん。若くして木村屋に入り、五代目として家族と共に店を守っている。地元に愛される老舗に「雪くま」を新たな名物として根付かせた第一人者だ。星川沿いに店を構える一人として星川を盛り上げることへの熱い想いも語ってくれた。

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「不時着」で始まった家業での仕事

俊太郎さんは現在27歳。学生時代に進路を考える時から「自分も木村屋になるのかなとうっすら思っていた。」という反面、どこかで「まだそのタイミングではないだろう。」と考えていたそうだ。大学のゼミで地域活性化の活動に携わっていたこともあり、卒業後は市役所で働きたいと思っていたのだという。しかし結果は思わしくなく、家業の木村屋に入ることに。そのことを俊太郎さんは「不時着だった。」と笑って表現する。

店には現役で蕎麦を打つ祖父と父。現在は技と味を学ぶ修行期間だそう。「時に反発もする。」と言いつつも、家族と共に切り盛りする店について語る俊太郎さんはどこか誇らしそうだ。

「一番のものをつくりたい」から生まれた雪くま

そんなお店で俊太郎さんが力を注いでいる商品が、熊谷のご当地かき氷「雪くま」だ。「何でもいいから一番のものを作りたかった。」と語る俊太郎さん。まだ現役として活躍する祖父と父がいる中で自分にできることをやろうと思って取り組み始めたのだという。

最初に作ったのは「熊谷桜」という商品。桜餅をイメージした味わいの木村屋オリジナル雪くまだ。「4月以降も熊谷の桜を感じてほしい。」その想いから雪くまに桜を組み合わせた。柔らかなピンク色のシロップは春の熊谷堤を連想させる。色づくり、味づくりには数か月間の試行錯誤があった。そんな逸品は2018年に開催された「熊谷うまいもんカップ」でグランプリを受賞。「一番のものを作る」という自身の想いを俊太郎さんは実現したのであった。

木村屋五代目としての覚悟

大学卒業後に家業に入った俊太郎さんだが、木村屋の外で蕎麦の勉強をしたこともあった。だからこそ「店の味」に対しては考える部分があるそうだ。作り手の好みの味が「美味しいもの」として提供される飲食店。しかし、当然ながら自分の好みが必ずしもみんなの好みと同じではない。「自分の代になった時に今の味を変えるのか守るのかは葛藤するところ。」と味づくりへの想いを覗かせた。「不時着」と言いながらも店への熱意は他の家族にも負けていない。

「転職する気はないし、一生この仕事をしていくだろうと思っています。」そう語る俊太郎さんは木村屋の歴史と将来の両方を見つめているのだろう。

「星川を背負っていきたい」地域の発展にかける情熱

俊太郎さんは星川通りで毎月第二土曜に開催される「星川夜市」の実行委員長も務めている。「星川沿いで仕事をしていく上で、星川の発展は必須。」と語る俊太郎さん。学生時代のゼミ活動での経験も原動力の一つとなっているそうだ。お店にも星川をモチーフにしたメニューがある。川幅を表現した幅広麺のうどん「星川うどん」だ。材料には熊谷の地粉「あやひかり」を使用している。まさに熊谷と星川への愛が詰まった一品と言えるだろう。

「野望は星川を背負っていくこと。」俊太郎さんはそう言って笑う。見据えるのは木村屋の発展のみにとどまらない。行き交う人々と店を構える人々が共に楽しむ星川通りの未来だ。

木村屋の五代目として、星川沿いに店を構える一人として、俊太郎さんは今日も街を盛り上げるために動き続けている。

※本文は、2020年2月3日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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