コーヒーを【真直】に伝えることで生む出会い|FRUITFUL COFFEE 代表 高橋 清純|『週刊フードラボ』#39

今回のゲストはFRUITFUL COFFEE(フルートフルコーヒー)代表の高橋清純(たかはし・きよすみ)さん。

白と黒を基調とした熊谷駅近くの店内で、カウンター越しにバリスタとして様々なお客様と向き合う日々。高橋さんが語る「出会い」という言葉は、人と人、人と技術、そして世界の多様性という話に繋がっていた。

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「こういうお店があったらいいな」を集めたカウンター

高橋さんは飲食の専門学校で店舗プロデュースを学んだ後、複数ブランドの飲食店を展開する企業に就職した。ブランドをゼロから立ち上げる仕事が主で、イタリア料理、和食、バー、ショコラティエ(チョコレート専門店)と携わった業態は多岐に渡る。この仕事内容を「ブランドに合わせ、ナイフ1本、フォーク1本を丁寧に選んでいくディープな世界」と高橋さんは笑う。

スペシャルティコーヒー協会で米国と欧州の世界共通の資格(コーヒースキルズプログラム)を取得後、FRUITFUL COFFEEを2019年にオープンさせた。自身の経験に加え、改めて様々なお店に足を運び、「こういうお店があったらいいな。」という要素を一つひとつ集めて作り上げた。

細長い店舗の奥に続くカウンターも「あったらいいな」のひとつだ。プロのバリスタが持てる技術を存分に発揮して淹れたコーヒーを、お客様はカウンター越しに楽しむことができる。

「豆を焼かない」理由は「その道のプロ」への尊敬から

生豆のコーヒーに火を通すプロセスを焙煎と呼ぶ。高橋さんは「お店を開く時、コーヒー豆を焼かないと最初に決めた。」と語る。「その道のプロに任せられることは、そのプロに任せていく」というポリシーを持つ。店舗プロデュースの場面で、様々なプロフェッショナルを束ねてきた自身の経験からのようだ。

FRUITFUL COFFEEで取り扱う豆は、コンペティション(競技会)の焙煎部門で優勝をするような世界チャンピオンの豆や、日本国内では買い付けることが難しい豆である。他のカフェでは出会うことが難しいコーヒー豆をお客様に提案できることが、お店自身の魅力につながっている。焙煎をしない選択が、品揃えに集中できる環境を作った。そして、高橋さんのお店では、お客様が世界中のコーヒー豆と出会えるようになった。

「美味しいものがそこに生まれてハッピーを生む」という純粋な思い

高橋さんは「コーヒーのレシピも、淹れ方も、お菓子のレシピもお客様に聞かれれば教えます。」と語る。その理由に「そこに美味しいものが生まれればハッピーを生む」という思想がある。

コーヒーの飲み方は自由であり、お客様ご自身が美味しいと感じる事が一番だと強調する。「ミルクを入れても、砂糖を入れても、ガムシロを入れても良い。決して無理をして飲むものではない。」との考えからだ。

ただ、高橋さんは「基本はブラックで飲んで欲しいと思う。それはバリスタの役割として、豆の本来の美味しさをしっかり伝えたいから。」と語る。加えて「コーヒーは少しぬるくなってきてからの方が味が楽しめるということを伝えたい。」と優しく微笑んだ。

「飲む人の好みに寄り添い、楽しんでいただける可能性がある」飲み物

高橋さんは「色々な方の目に触れる場所でお店を作りたかったから」熊谷駅の近くに店舗を構えた。足を運ぶお客様の層は様々で、好みに合わせて淹れ方を提案してくれる。「コーヒーは飲む人の好みに寄り添い、楽しんでいただける可能性がある飲み物だ。」と語る。多様な品種、焙煎方法、淹れ方、飲み方の掛け合わせが可能性を生む。

FRUITFUL COFFEEでは、自宅でコーヒーを淹れるために店頭で飲む豆と同じものを入手することができる。カウンター越しに自身の淹れ方を比べた上で、味の違いを楽しむお客様もいる。ドリップの抽出器具や技術によって味が変わる繊細なコーヒーならではの楽しみ方がある。

店頭では10種類の豆を販売している。海外のロースターは、デンマーク、ストックホルム、香港の3店舗のロースターの焙煎豆が販売されている。北欧やヨーロッパは、コーヒーの消費量が多いコーヒー先進国である。高橋さんは「コーヒー界隈では移民が多い地域のほうが味が進化する。」と語る。民族多様性がコーヒーの味に影響している可能性があるという視点が面白い。高橋さんが意識した「色々な方の目に触れる」店舗の場所選びに似た視点を感じる。

放送の終わりに高橋さんは、FRUITFUL COFFEEで飲むことができるコーヒーの品種であるゲイシャ種が発見されたストーリーに触れた。

「ゲイシャ種は、元々誰の目にも触れずに自生していた品種だった。偶然コーヒー関係者に見つけられ、品評会に出したら高値がついたというのが始まり。それがたまたま、世界中の人々を虜(とりこ)にしたという。これも面白い「出会い」のひとつだ。」

高橋さんは自身の仕事を「様々な人との出会いそのもの」だと語る。今日も高橋さんは、コーヒーを通した「出会い」の可能性の扉を開けて、FRUITFUL COFFEEのカウンターで待ってくれている。

※本文は、2020年8月10日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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