人と地域への【感謝】が繋ぐ商売のご縁|沢田本店 澤田三重子|『週刊フードラボ』#35

今回のゲストは、沢田本店の澤田三重子(さわた・みえこ)さん。県内外で人気のお菓子を製造販売する沢田本店で店舗展開や企画販売に尽力してきた。長年の商売の経験を通してめぐり逢ったたくさんの人々、手に入れた学び。全てを振り返りながら三重子さんが口にする感謝の言葉には重みと温かみがある。

目次

お菓子への熱意から誕生した「野菜ようかん」

三重子さんが沢田本店に嫁いで50年。家事と仕事の両立、市内外への店舗展開、工場の新設…。長きに渡る会社の成長を「楽しいことと苦しいことが同じだけあった。」と振り返る。

中でも思い入れ強く語ったのは「野菜ようかん」の開発だ。様々な野菜が栽培される県北地域。地元のPRのために何か野菜を使った商品が作れないかと持ちかけられたのがきっかけだった。

ご主人が地産地消にこだわって作った羊羹。「1日8本売れるなら商品化する。」というご主人の言葉に三重子さんはチャンスを見出した。「あなたの熱心さにつられて買いに来たよ。」と言うお客様もいるほど、三重子さんは懸命に商品のPRを重ねたのだという。

その努力の末に野菜ようかんの商品化が実現した。その後野菜ようかんは『全国食品フェア』に出品され、農林水産省食品流通局長賞を受賞。平成皇后に献上された逸品として名を馳せることとなった。

「人が集まるところにはお茶がある」囲炉裏のあるお店作り

沢田本店の店舗には囲炉裏がある。来てくれた全てのお客様にお茶とお菓子が振る舞われる憩いの場だ。「人が集まるところにはお茶があることに気づいた。」という三重子さん。元々あった駄菓子の量り売りコーナーを取り払ってみんなが集う「ふれあいの囲炉裏」を作った。多くの店舗で定着したこの囲炉裏の周りには和やかな空気が流れる。

そんな風に地域の人々を繋げてきたお店。お菓子屋とは思えぬほど多種多様なイベントも魅力の一つだ。それらの取り組みが評価されて2015年には優良経営食料品小売店等表彰事業で農林水産大臣賞を受賞している。「何でもかんでもやっている楽しいお店なので、ぜひ遊びに来てください!」三重子さんは笑顔で話した。

文化を繋ぎ「こころ」を育むお菓子屋

もう一つ沢田本店を語るうえで欠かせないのは、伝統を発信する取り組みだろう。

「商売をうまくやるには地域を巻き込まなくちゃいけない。」そう語る三重子さんは、『ふるさとの名勝十選』を主催してきた。お店のチラシを媒体に、街の人々が選んだ名所に専門家の解説をつけて発信してきたのだ。活動はメディア上のみにとどまらず、過去には地元を巡るバスツアーや、お寺での野点のお茶会も企画した。伝統行事や文化を伝えるための活動には惜しみなく力を注いでいる。

店内放送では季節ごとの伝統行事やお祝いについての情報も流している。若い世代にも良き文化を繋げていきたいという強い思いがあるからだ。「さわたはこころを売る店だね。」お客様のひと言が三重子さんの中に残っているという。

地域の魅力、伝統、日本の文化を伝え、この地域に生きる一人としてのこころを育むお菓子屋なのだ。

「人生の節目」に想いを繋ぐお菓子を届ける

「誰にでも訪れる人生の節目には必ずお菓子がそばにある。」と三重子さんは口にした。

出産、結婚、誕生日…様々な節目にお菓子を求めに来てくれるお客様を長年見てきた。そこに温かく寄り添うのが三重子さんの作ったオリジナルの掛紙だ。贈る相手やシチュエーションにあわせて、言葉や絵をつける。長年お菓子とお客様に携わってきた三重子さんだからこそ作り出せる贈り物だろう。

お客様への温かな思いやりに溢れる三重子さん。彼女の名刺にはこんな言葉が記されている。

「お菓子を通じて郷土の歴史と日本古来から伝わる文化を大切にしています。あなた様との出会いに感謝し、大切にしたいと思います。」

三重子さんの長年の取り組みそのものがこの言葉に集約されていると言えよう。

人生の節目に彩りを添える沢田本店のお菓子には、人を育む愛が詰まっている。

※本文は、2020年7月13日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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