【食農】で伝える野菜の魅力|Peaceful Table 主宰 柿沼良輔|『週刊フードラボ』#32

今回のゲストは、Peaceful Table(ピースフルテーブル)主宰の柿沼良輔(かきぬま・りょうすけ)さん。「野菜の生産から調理までトータルコーディネートする野菜の専門家」として、農業生産と飲食ビジネスを展開している。自身の経験から食と健康について見つめ直したのをきっかけに、農業に想いを寄せるようになった。そんな柿沼さんの言葉の端々には未来の自分たちの暮らしへ注ぐやさしさが溢れている。

目次

地元で取り戻した「野菜中心の食生活」

柿沼さんがPeaceful Tableを立ち上げたのは、大学卒業後に入った会社を辞めて熊谷に帰ってきたことがきっかけだった。朝から夜まで仕事に追われていたサラリーマン時代。食生活も乱れ体調を崩してしまったため、退職して地元に帰ってきた。兼業農家を営む実家で取り戻したのは新鮮な野菜をふんだんに使った食卓だ。体調もみるみる回復し、「野菜中心の食生活を続けたい。」と感じたのだという。

学生時代から「飲食店をやりたい」という気持ちを持っていた柿沼さん。地元に帰ってからは様々な飲食店で働き、修行を積んできた。二つの想いが相まって行きついたのが、自ら耕し野菜を育て、料理し食卓に並べる「トータルコーディネート」の提供。農業と飲食業をかけ合わせたPeaceful Tableの形が生まれたのだ。

きっかけはスナップエンドウの不作

農家の環境で育ったため、農業を始めることに抵抗はなかったと振り返る柿沼さん。抵抗どころか採れたてを調理して美味しく食べられる快感にはまっていったのだと語る。

そんな柿沼さんがより深く農業にのめり込んだのは、大好きなスナップエンドウが不作だったある年からであった。毎年採れていたはずのものが採れない悔しさに、「ちゃんと勉強して来年はたくさん収穫しよう。」と決意をしたそうだ。勉強の甲斐あって翌年は無事成功。見よう見まねで取り組んでいた農業の面白さに改めて気づく出来事であった。

「味が濃くておいしい」無農薬野菜の魅力

そんな野菜愛溢れる柿沼さんが感動したというのが、小川町で出会った農家さんの作る無農薬野菜だ。「味が詰まっていて、濃くて、すごく美味しかったんです。」と当時の感動を語ってくれた。農薬や化学肥料を使わずに育てられた野菜の味に魅力を感じた柿沼さんは、自身も無農薬野菜にこだわることを決意した。こだわる理由は味のためだけに留まらない。「水や土、環境にもなるべく負荷をかけたくない。」と柿沼さんは生産する過程への想いを覗かせた。野菜の味とそれを育てる環境の双方に向き合う姿勢からは、食と農に対する真摯さが伝わってくる。

料理を通して「かっこよく見せる」

こうして生産された野菜たちは飲食店や個人向けに販売されるほか、イベントなどを通して柿沼さんの手で調理されお客様のもとに提供される。「畑から食卓まで。」これこそがPeaceful Tableの最大の魅力だろう。出張料理人として提供しているのは、前菜からデザートまで揃ったコース料理。そのほとんどが、自分で育てた野菜やフルーツを使ったメニューだ。

料理を提供するときのこだわりは「きれいに、かっこよく見せる」こと。「それをきっかけに農業に興味を持つ人、そして未来の農業従事者が増えたらいいなと思っています。」そんな熱意を胸に自身が見つけた野菜の魅力を形にし、伝え続けているのだ。

食べることは生きること

柿沼さんは自身の仕事を「僕の生き方そのもの」と表現する。元は自分が食べたい野菜のために始めた農業。だからこそ、遊び感覚な部分があると同時に仕事でもある活動なのだ。そして調理までを担う時、それは仕事でもあり自己表現の場でもある。「いろんな感情が生まれるんです。作ってるときも料理してるときも。」そんな柿沼さんの言葉からはPeaceful Tableへの誇りが感じられた。

豊かな農と食のある未来をつくるために、柿沼さんはこれからも思いを込めた野菜を届け続けていく。

※本文は、2020年6月22日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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