コーヒーに自身と地域を託して【成長】を見据える|ホシカワカフェ オーナー 鈴木洋介|『週刊フードラボ』#11

今回のゲストは、ホシカワカフェのオーナーの鈴木洋介(すずき・ようすけ)さん。オーストラリアのカフェとの出会いから、お客様の日常の一杯を目指して地元・熊谷でカフェを開業した。現在はホシカワカフェ、conscience(コンサイエンス)、プレイスコーヒーとお客様との距離の近いカフェを展開しながら、熊谷だけでなく世界へもコーヒーやカフェの魅力を発信している。

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「才能のなさを感じた」プロの世界での挫折

10代から音楽が好きで、レコード会社に所属してリミックスをされていた鈴木さん。朝はスタジオに行き、月に27日間はクラブでDJやライブをやっていた当時の生活だった。

プロの世界で仕事をする中で、仕事をもらうタイミングと作品を作れないタイミングが重なる時があり、自身の才能の無さを感じられた。その不調のため所属会社から3年間の活動休止を告げられ、生活は一変してしまった。

やることを失っていた時期に大学のゼミの先生へ相談し、勧められたのがオーストラリアの提携校への留学である。環境を変えてみることを考え、アデレードへ行くことにした。

「挫折の果てに逃げ込んだ」カフェとの最初の出会い

ライブなどでサインを要求されるような世界から一転してしまったオーストラリアでの生活は、とても寂しく感じたという。そこで逃げ場として飛び込んだグロリアジーンズコーヒーが、カフェとの最初の出会いとなる。

現地で感じたカフェの素晴らしさから「帰国したらカフェをやりたい。」と決心し、留学途中だったアデレードから少し大きな街のメルボルンへ、カフェやケーキ店を見るために引っ越した。

留学先のアデレードでは「救われた。」と感じた経験があると振り返る。初めてできた外国人の友達の誘いで行ったお店では、食後にパンケーキが出てきた。その食事の中で友達と一緒の、1人ではないその環境が鈴木さんを救ってくれていた。

「ホシカワという名前を背負って海外に出る」という開業時のプラン

帰国後の2009年に開業したお店が、ホシカワカフェだ。星川の近くで生まれ育ったという鈴木さん。「お店を開くなら星川」という思い入れがあり、店名に「ホシカワ」を入れた。

ホシカワカフェとあえてカタカナにしたのは、鈴木さんの大好きな星川通りのことを海外の人に知ってもらうためのこだわりの証だ。開業後の10年間は地元・熊谷でお店を営み、そのあとに自身のコーヒー豆を海外へ持っていくというプランを開業当時から持っていたという。

現在は既にシンガポールやマレーシアなどに進出しており、現地のコーヒー店や焙煎所ではホシカワカフェのコーヒーを楽しむことができる。

「地域に対する誇りを持ってもらう」コーヒーからのまちおこし

ホシカワカフェの国内外への事業展開には、ホシカワカフェのコーヒーを飲む人に地元への誇りを持ってもらいたいという想いが隠れている。ホシカワカフェのコーヒーを飲むお客様が、他の地域のカフェで熊谷の話をした時に、ホシカワカフェ知ってるよ、と言われることがある。「それを聞いたらめちゃめちゃプライドを持てるじゃないですか。」と語る。これが鈴木さんなりの「まちおこし」なのだ。

この地域に対する想いには、ノルウェーで訪れたコーヒーの世界チャンピオンが営むカフェでの出来事も強く影響している。鈴木さんがそのカフェでコーヒーを飲んでいると、現地の年配の女性に、わざわざそのカフェへ来た理由を尋ねられた。オーナーが世界チャンピオンである話をすると、その事実に驚かれたという。世界チャンピオンのコーヒーも、地域の人にとっては日常の一杯になっていた。

「震えました。」

鈴木さんは、その日常に驚きを感じたと振り返る。

「お客様の日常にある一杯」の追求

カフェとしての機能を持たせ、自身で図面を書いたというホシカワカフェ。お客様と対面で話がしたいという思いから、持ち帰り専用のコーヒースタンドにしたconscience(コンサイエンス)。公園のように広く安心感のあるPLACE COFFEE。

「特別な一杯は作りたいけど、お客様の日常にある一杯になりたい。」

「毎日でなくてもいいです、一ヶ月に一度でもちょっと変わったコーヒーを飲みたいと思ってもらえたら。」

鈴木さんは、コーヒーやカフェの魅力を伝えながら、日常の延長に「成長」の二文字を見据えている。

※本文は、2020年1月27日の放送内容をもとに編集したものです。掲載情報は放送日当時のものです。ご注意ください。

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